伍代夏子の新曲『しゃんしゃん牡丹』は、林あまり作詞の現代和歌謡 「非現実的な世界を思い切り楽しんでいただける歌です」

2025.7.23

伍代夏子が新曲『しゃんしゃん牡丹』を7月23日にリリースする(カップリングは『千年万葉の恋歌』)。詞を歌人の林あまり、曲を若草恵が提供した本作のテーマは「」。難病の発症により一時は歌手として歌うことをあきらめかけたという伍代が、歌唱復帰後、こだわってきたテーマでもある。日本記念日協会が認定した7月25日の「伍代夏子の日」には、和文化の素晴らしさを伝えるイベント「和心祭」の第2回も開催。現代和歌謡『しゃんしゃん牡丹』で表現しようとした世界について、「能登半島地震復興応援コンサート」をはじめとしたさまざまなチャリティーやボランティア、ラジオパーソナリティーなど、年々広がっていく活動への思いを聞いた。


シャンな主人公のイメージは『浮浪雲』の女性版

――伍代さんには、『冬牡丹』『淡雪牡丹』など「牡丹」をタイトルに冠した曲がありますが、『しゃんしゃん牡丹』の主人公の女性は、これまでの曲のしっとりとした主人公とイメージがまったく異なりますね。

ちょっと面白い楽曲ができたかなと思います。この曲の主人公はあでやかな牡丹の大輪そのもの。たおやかな風情はなく、気が強くてきっぷがよい江戸っ子です。モテモテでおちゃらけているけど、中身はすごくシャイ。それを隠すように跳ねっ返りを演じているイメージですね。

――かっこいい女性ですね。

西部劇の決闘シーンを思い浮かべてみてください。土煙の舞う道を主人公が歩いてくるところを、道の両側に鈴なりの人々が注目しているシチュエーションがありますよね。あんな感じで、柳並木の道を女性が歩いてくる。鈴なりの人たちが「来たよ、来たよ」「きれいだね」と口々にささやいていて、主人公は「あんたたちには目もくれてやるもんか」っていうふうに歩いているけれど、花魁道中のような高嶺の花でなく、一切目もくれないわけではない。「ピーチクパーチクうるさいね、あんたたちは。今日も私はきれいだろう」っていう、バーのママみたいなイメージ。「ネエちゃん、一緒に飲もう」って誘われても、「あんたたちのところに行くわけがないでしょ」という女性像が浮かんでいるんです。こういうタイプの女性なら演じてみたいなと思って。これが花魁の太夫のような、下々の者の手が届かない女性が主人公だったら、歌いだしのセリフ「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」は、恥ずかしくて歌えなくなっちゃう。

――そのかっこよさを象徴するのが、「シャンだ シャンだね しゃんしゃんと」という印象的なフレーズに表れていますね。

「シャン」は、きれいな美しい人、さらに、見かけよりは親しみやすく、ちゃらんぽらんのようでいて毅然としている人。この歌の主人公は、ジョージ秋山さんの漫画『浮浪雲』の女性版とでもいえばいいかしら。そのような女性に仕上げたくて、CDのジャケットではショートカットふうにして、ピンクの派手な衣装を選んだんです。

――詞の構造も面白いですね。前半は状況説明で、最後のサビの2行で一気に転換して、女性の心情をほとばしるように歌われています。常々、「歌は気持ちを乗せるものだ」とおっしゃっていますが。

前半のパートはハッタリや感情を込める歌い方ではないですし、やはり最後の2行ですね。「花じゃないんだ、サテナ あたしは女」というフレーズに「本当は違うのよ。私の心の内が見えるの? あんたたちじゃ私に太刀打ちできないけど、振り向いてほしい人はいるのよ。おくびにも見せないけどね」という心情を乗せて歌っています。

――俯瞰のパートと心情を込めるサビの対比があざやかです。

そこが面白くて、「これは作りたい!」と思って選んだ作品です。林先生からは三編の作品をいただいたのですが、自分としては即決でした。林先生とは面識はありませんでしたが、ディレクターの方がお知り合いで、林先生と(若草)恵先生のコンビでとご提案いただき、林先生にお願いしたところ、二つ返事で引き受けてくださいました。

――若草先生の曲も壮大で、サウンドも琴や鼓から入り、三味線がかぶってくるイントロから余韻の残るアウトロまでドラマティックですね。

私の代表曲をいくつも手掛けてくださって、もう長いお付き合いなので全幅の信頼を置いています。恵先生に失敗はないんです。今回も一緒にご相談させていただきながら仕上げていただきました。

――『しゃんしゃん牡丹』は、実際に歌われて、難しかったでしょうか?

決して難しくはないですね。曲作りでは、演じる世界のイメージが自分のなかでできあがり、実際に歌を乗せると「何か違う」と崩れる時があるんです。それは歌だけでなく、音色(おんしょく)も衣装や髪型などのアートワークまですべてにおいてです。最初に考えていたことを制作の過程でちょっとずつ変えながら、完成にたどり着くことも多いのですが、今回はストンとできました。

――すべてをうまく調和させて、一つの作品にまとめていくのは、大変そうですが、楽しそうですね。

そこがいちばん楽しいところです。時にうまくいかないこともありますが、そういう時は勉強したということで、次にまた進んでいく。

意見をぶつけ合えるから楽しい!?作品作りの面白さ

――『しゃんしゃん牡丹』を歌ううえで、もっとも大切にしたポイントはありますか?

粋(いき)! 粋ときっぷのよさです。内に情熱を秘めた、芯が一本通った女性なので、最後の「花じゃないんだ あたしは女」が決まればという歌い方をしています。私たちはシンガーソングライターと違い、詞・曲をいただきますから、毎回初めて目にする詞のなかの時代、言葉遣い、主人公の性格、すべてが未知の世界です。そこでポンと浮かんだ人物像によって声の出し方も違ってきます。私の中で、『しゃんしゃん牡丹』の女性はこういう歌い方以外ないと思っているんですよね。林先生が「そういう女性じゃないのよ」とおっしゃったら、変えることを意識しなければなりませんが、ありがたいことに両先生からは自由にやらせていただきました。かつては作詞・作曲の先生がそれぞれ違う人物を想像して作品を作られてきて、私の考えも違ったりして。そうなると深夜2時、3時まで作業が及ぶこともありました。

――ご自身が主体となって作り上げる場合も、先生方と意見をぶつけ合って作り上げる場合もそれぞれ作品作りの面白さがあるんですね。

そういうレコーディングも楽しかったんですね。5時間かけて、結局最初のテイクを採用することもありました。結果的には最初の30分で終わりにできたかもしれないけれど、時間をかけてそこにたどり着いたことに価値があるんですよね。

――カラオケでファンの方が歌う際は、どのようなことに注意すればよいでしょう。

粋を楽しんでください。時代劇でも西部劇でも、私のように『浮浪雲』でもいいので、ありえない世界を想像するような、遊びがあることが大切な歌だと思います。

――アニメやCG合成を駆使した『時の川』のミュージックビデオが海外の方からも人気でYouTubeの再生数が200万回を超えていますが、今回はどのような映像になるのでしょう?

(取材時6月下旬)まだまったくわからないんですよね。撮影ではスポーツジムにあるランニングマシーンのようなものに乗って歩くシーンを撮影しました。今回も同じ撮影チームなので、彼らがどのようなイメージで映像を作ってくるか私も楽しみで。ミュージックビデオは、この数年、YouTubeなどで、世界中のたくさんの方にも見ていただきたくて、結構遊んじゃっています。

「和」にこだわる理由は人とのつながり

――今回の曲のテーマでもある「和」という言葉に、なぜこだわるようになったのですか?

もとをただせば私の声が出なくなって、歌手をやめたほうがいいなと思ったことがきっかけなんです。素晴らしい作家の先生方にお願いして、いい曲を作っていただいても、パフォーマンスもプロモーションもする自信もない。ちょうどコロナ禍でのことです。声も出ないので、セリフバージョンの『歌謡劇 雪中相合傘―科白編―』を制作し、その後、『時の川』からは病魔と闘いながら、今出る声で今歌える歌をリリースすることにしました。いまだ声は自在には出ませんし、40%戻ってきていませんが、歌も歌以外のボランティアなどのさまざまな活動も今できることをやろうということ。いろいろなことをやるなかで、別々に始めたことでもすべてがつながっていくんですよね。

――被災地復興支援、厚生労働省肝炎特別大使、警察庁特別防犯支援官、保護犬プロジェクト、災害時のペット同室避難を推進する「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」、趣味の写真撮影ほか、驚くほどたくさんの活動を行われています。

そういった活動が一つにつながっていくんです。私を中心にばらばらに伸びていた枝が、今つながりつつある。ものすごく大事な役割を担っているんじゃないかと最近少し自信を持ててきて。いろいろな人と知り合うことができていますが、歌手でいるから皆さんをつなげられることもあると実感しました。そのためにも回復して、本業の歌手をきちんとやらなければというモチベーションが、私の糧になっています。だから先日開催した写真展も「つなぐ~わたしたちにできること」というタイトルにしました。

――すべてがつながることが「和」なのですね。

「和」は、日本風ということだけではありません。「なごむ」「やわらぐ」「あえる」「まざりあう」ということを意味しています。人間同士のトラブルをまとめる活動もしていますが、大切なのは人との調和。和の心を皆さんにも持っていただきたいとこだわっています。

――NHKラジオ「ふんわり」の水曜日のパーソナリティーを担当していますが、ラジオのお仕事にはどんな魅力がありますか? これもコロナ禍の頃、2022年から始められていますが。

声の症状にとっては、歌うことより、喋ることのほうが厳しかったので、最初にお話をいただいたときは、ラジオで長時間しゃべるなんてできないかもしれないって思ったんです。でもあえて引き受けさせていただいたのですが、私の声の症状は、過緊張からくる症状だったので、荒療治のようなつもりで頑張っています。その時は「人生、歌がある」(BS朝日)の司会も続けていましたが、すべてを辞めて引っ込んでいたら、10年かかっても歌の世界に帰れないと思いまして、緊張の場所に身を置いたまま治療を続けることを選びました。

――ラジオではトークコーナーもありますが、多彩なゲストと知り合えますね。それがまたご自身の活動にリンクしていきそうです。

皆さん、面白くて意外な一面を見せてくださいます。いろいろなことに取り組まれている方ばかりで、例えばSHOW-YAの寺田恵子さんは、チャリティーのロックフェスを大黒摩季さんたちとやっているので、情報交換や協力もし合えますしね。LINE仲間がどんどん増えているんです。ラジオでの出会いから『いのちの砂時計』という曲も生まれました。林哲司先生がゲストでいらっしゃったご縁で、曲を依頼したら作ってくださったんです。

卓球部でガールズバンド結成!?

――(愛犬の)りくちゃんにそらちゃんも加わった生活はいかがですか?

にぎやかでいいですよ。昨日も一緒に出掛けました。出不精になったり、暑かったり、雨だったりすると、気が滅入る時もあるじゃないですか。でも、そういう時でも2匹がこちらをじっと見つめてくるので「何ですか?」と問いかけると、何がしたいのかわかるんです。手がかかりますけど、2匹の存在が私の力にもなっています。

――先日は台湾旅行もされていましたが、伍代卓球部の活動も盛んですね。メンバー出演による「能登半島地震復興応援コンサート」も既に2回行われています。

応援コンサートは、1回目はメンバー8名中の7名、2回目は全員で。今度また行きますけど、今回は7名が参加予定です。これはすごい出席率です。月1回の卓球練習後の食事会は、だいたい4~5名が集まりますね。

――卓球部で最近印象的なエピソードがあったら聞かせください。

やっぱり練習後の食事会のお店探しが大変ですね。食には結構うるさいからみんな(笑)

――賑やかで、おしゃべりもうるさくても皆さんいいお声なのでは。

みんな盛り上がって、しゃべる声も大きくなってしまうから、もうあちこちのお店で出禁になっちゃいそう。私のうちでお酒を飲む時は、みんな心おきなく飲めるから1本ずつお酒を持ってきてくれるんですよ。「もう寝るね」と私が先に寝室に下がっても、あとからうちの冷蔵庫を開けて「どれを飲んでもいいですか?」ってLINEが来ますから。この間、階段から1人落っこちたりしてました。けがは無くて大丈夫でしたけどね。多岐川舞子さんが(笑)

――7月25日の第2回「和心祭」は、どのような内容を予定していますか?

毎年「和」をテーマに様々なアイデアの中から企画した、和の文化を親しんでいただく参加型のパーティーです。私も歌いますが、ディナーショーではないので、日本舞踊などの出し物があり、今年は三味線奏者の方に来ていただきます。着付け教室もあります。毎回チャリティーも行っています。

――これから歌手として改めて今後やってみたいことなどはありますか?

できることをできる時にやっておきたいですね。誰かとコラボできたら面白いですよね。卓球部でガールズバンドを結成する話も出たのですが、誰もスティックやピックを持ったことないので、無理だね、となりました。私自身は学生時代、ロックをやっていた経験もあるんですよ。やっぱりミュージシャンのどなたかとコラボてみたいですね。

――最後に「うたびと」読者にメッセージを。

『しゃんしゃん牡丹』は、非現実的な世界を思い切り楽しんでいただける歌ですので、カラオケで歌われる際は、もう洒落て、サビにある「サテナ」を楽しんで言っていただければと思います。

伍代夏子『しゃんしゃん牡丹』

2025年7月23日発売

品番:MHCL-3139
価格:¥1.600(税込)

【収録曲】

1.しゃんしゃん牡丹(作詞:林あまり/作曲:若草 恵/編曲:若草 恵)
2.千年万葉の恋歌(作詞:朝倉 翔/作曲:手使海ユトロ/編曲:手使海ユトロ)
3.しゃんしゃん牡丹(オリジナル・カラオケ)
4.千年万葉の恋歌(オリジナル・カラオケ)

<あわせて読みたい>

伍代夏子、銀座でバースデーライブ開催! 美魔女艶歌卓球部が祝福&多岐川舞子がアルトサックスで共演「今を楽しく、悔いなく生きてください」
伍代夏子、BEGINの渋谷への想いを描いた『渋谷百年総踊り』をカバーしシングルとして10月30日に発売! BEGIN比嘉栄昇のコメント到着

関連キーワード