徳光和夫「まごころ募金コンサート 歌い手たちが覚悟を持って挑戦した美空ひばりさんの名曲に聴き惚れてしまいました」

2019.11.6

一般社団法人・日本音楽事業者協会主催『虹の架け橋 まごころ募金コンサート』が10月17日、渋谷のNHKホールで行われた。2000年の夏に起こった三宅島大噴火の被災者支援をきっかけに開催されるようになった本コンサートも今年で19回を数え、坂本冬美や氷川きよし、山内惠介ら19組・総勢22人が出演した。そこで第10回から司会を担当する徳光和夫氏に、このコンサートへの思いや歌の持つ力について話を伺った。

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虹の架け橋 まごころ募金コンサート』の司会を務めて今年で10年。数多くの歌番組を担当してきた徳光さんにとっても「思い入れのあるコンサート」だそうだ。とくに今回は平成から令和に変わって迎える節目での開催。新時代を担う歌手たちが、美空ひばりさんの楽曲に挑戦するといった企画が盛り込まれ、「日本の名曲を歌い継ぐという意味で感慨深いものがありました」と語る。今コンサートの聴きどころをうかがった。

――演歌・歌謡曲ファンにとっては、「徳光さんと藤原紀香さんがコンビで司会をするコンサート」として定着しています。

よく言われます。コンサート名は長くて覚えられないけど“徳光・紀香の”といえばすぐ分かる、と(笑)。ハリウッド女優のようにスラッとして背の高い紀香さんと、典型的な日本のおじさん体型の私。アンバランスなビジュアルがみなさんの印象に残るのでしょう。最近は演出の方もそれを意識していて、紀香さんと、やはり高身長の氷川きよし君とで私をサンドするようにしたスリーショットを必ず入れるんです。私が捕らわれた宇宙人のように見えるそうです(笑)。でも、そんな風にでも覚えていただけるのはありがたいですね

――このコンサートには思い入れがあるとうかがいました。どのような点が?

通常のコンサートの場合、出演する歌手は自分をどう表現しようか、といったことをまず考えます。しかし、このコンサートはチケットの売上の一部を災害に見舞われた地域の復興支援に充てるというチャリティーの意味合いがある。出演する方々は、もちろんプロの歌手として一生懸命歌うわけですが、同時に世の中の役に立ちたいという思い、“善意”があってステージに立っています。いわば善意で構成されるチームのワンピースでありたいという意識があるんです。一方、来場されたお客さまにも単に歌を楽しむだけでなく、チャリティーに協力しようという同様の思いがあります。お目当ての歌手はいるはずですが、そうした意識から出演する歌手全員に心からの拍手が送られる。この歌手たちとお客さま、両者の善意が伝わり合って会場全体が温かい空気に包まれるわけです。善意は押しつけるものではないと思っているので、私も強調するのは避けているのですが、ここではそういう思いが根底に流れていて自然に温かさと一体感が生まれる。それが、このコンサートの魅力であり、司会者として関われることをうれしく思っています

――今回は令和になって最初の開催。時代の変わり目ということで、『新しい時代へ! 歌い継ぐ日本の名曲』がテーマです。

平成の時代にもすばらしい歌はたくさん生まれましたし、令和になったこれからもそれは続くでしょう。ただ、昭和の名曲は歌い継いでいかなければなりません。昭和の歌というのは、メロディーも詞も心に沁みますし何より覚えやすい。今の人でも3回聴けばメロディーが入り、5回聴けば口ずさめる歌が多い。これこそ名曲の条件だと思うんです。また、昭和の歌は時代を映してもいます。今回は山田太郎さんがご出演されていますが、山田さんを世に出した『新聞少年』は日本の高度経済成長が始まろうとしている時期にヒットした曲。まだ豊かにはなっていないけれど、これから頑張ろうという時期の応援歌の役割を果たしました。昭和の歌は、その時代時代の日本を表わす力を持っているんです

――その歌い継ぐべき歌の象徴として特集されたのが美空ひばりさんの楽曲ですね。

早いもので、ひばりさんが亡くなって30年が経ちます。今回の出演者にもひばりさんの歌をリアルタイムで聴いた経験のない人が多くなってきました。ただ、CDなどで聴いて、歌の巧さはもちろん心情を伝える力、存在の偉大さは知っているわけです。歌唱力に定評のある方たちですからすぐに歌いこなすことはできるのでしょうが、ステージで歌うとなると相当の覚悟が要るはずです。お客さまはひばりさんの歌を愛聴してきた方々ですしね。それでも彼ら、彼女らは果敢にチャレンジした。自分が担当する曲が決まってから、かなりの回数を歌い込んできたようで、いずれもすばらしい出来でした

――徳光さんご自身の心に残った楽曲は?

すべてですよ。山内惠介君が歌った『愛燦燦』もよかったですし、伍代夏子さん、坂本冬美さん、石原詢子さん3人による『川の流れのように』、若いみちのく娘!がダンスを交えて歌う『真っ赤な太陽』も楽しめました。氷川きよし君の『悲しい酒』も素晴らしかったですね。非常に難しい曲ですが、氷川君はこれを見事に歌い切った。それだけでなく、詞に込められた心情を伝える表現力には胸を打たれました。また、個人的には新妻聖子さんと城南海さんが2人で歌った『一本の鉛筆』も心に残りました。この曲にはひばりさんの反戦の思いが詰まっている。改めて歌い継いでいくべき名曲だと思いました

――聴きどころ満載のコンサートだといえますね。

ひばりさん特集の話ばかりしてきましたが、このコンサートでは出演者それぞれの新曲も披露されました。テーマにある“新しい時代へ!”がここに表れています。“時代の変わり目である今、こうしたテーマのステージに立てたことは誇りであり幸せです”と出演者のみなさんは語っておられました。その思いとやる気が詰まったコンサート。聴き逃せない内容であることは私が保証します

コンサートの模様はNHKで放送!

■チャンネル
NHK-BSプレミアム
■放送日時
<90分版>
2019/11/3(日) 19:30〜20:59
2019/11/9(土) 12:00〜13:29 ※再放送
2019/11/15(金)16:30〜17:59 ※再放送
<120分版>
2019/12/29(日)12:00~13:59

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