市川由紀乃が都内でリサイタル「新章」開催、取材会と本編を独自レポート! 「いろんな経験があったからこそ届けられる歌や言葉がある」ミュージカルにも挑戦

歌手の市川由紀乃が10月6日、東京・千代田区の東京国際フォーラム ホールCで「市川由紀乃 リサイタル2025 『新章』」を開催した。
昨年、卵巣がんで活動休止を発表し、摘出手術と抗がん剤治療を経て、今年3月に活動を再開した市川由紀乃。5月に発売した新曲『朧』がヒット中で、新装盤・星月花盤を9月に発売した。この日は2年ぶりとなる恒例のリサイタルで、東京国際フォーラムでのコンサート開催は約5年ぶり。会場には全国各地から1500人の観客が詰めかけた。
市川由紀乃が魅せる「新章」
会場が暗転しスクリーンに流れたのは、市川由紀乃の“再出発”を象徴する「所信表明」のVTR。袴姿の市川が大筆で書をしたためながら、卵巣がんの闘病を経てファンへの感謝を伝えるとともに「新たな歌手人生」への覚悟を誓った。映像を終え紗幕が上がると、ステージ後方に『新章』と書かれた巨大な掛け軸が登場。その力強く美しい書に観客が感嘆の声を上げる中、金箔が施された振袖に身を包んだ市川が代表曲『命咲かせて』を熱唱。息の合った由紀乃コールで客席が一体感に包まれると、『うたかたの女』『花わずらい』を全身全霊で歌い上げ、観客から割れんばかりの拍手を浴びた。
市川は「今日は皆さんにお越しいただき心から感謝申し上げます。こうして舞台に立たせていただいていることが奇跡のように思います。タイトルの『新章』は、新たな歌手人生の決意を込めて付けさせていただきました」とあいさつし、女性の繊細な心模様を描いた『年の瀬あじさい心中』を披露した。
続いて、市川が敬愛する昭和の歌姫・ちあきなおみについて語り始めると、会場に上品な白檀の香りが漂う演出も。これはファンに好評だった台湾の老舗フレグランスブランド、明星花露水(ミンシンファールースェ)とのコラボによるもので、この日の会場でもミニボトルを販売。「ちあきなおみの歌世界」のコーナーでは、数ある作品の中から、初カバーとなる『かもめの街』『ルージュ』『夜へ急ぐ人』の3曲を披露。曲ごとに表情を変えながら、持ち前の豊かな歌唱力を余すところなく表現し観客を魅了した。
歌謡ミュージカルに初挑戦
歌唱中、真っすぐに客席を見つめる市川由紀乃の眼差しには、再出発への強い意志が宿っていた。その意志を体現するかのように、この日はショート歌謡ミュージカル「片手にピストル、心に花束を…」に挑戦。これは沢田研二の『サムライ』の世界観をもとに構成され、マフィアの抗争に巻き込まれた男女の物語が繰り広げられた。その中で、タキシード姿の市川が中森明菜の『TATTOO』、真島昌利の『アンダルシアに憧れて』、中森明菜の『十戒』、そしてフィナーレに沢田研二の『サムライ』を力強く歌い上げ、第1部は幕を下ろした。
休憩を挟んで始まった第2部は、リサイタル恒例の名物コーナー「トラック野郎 ゆき五郎」へ。気っ風の良いトラック運転手・ゆき五郎に扮した市川が、手作りのデコトラをバックに菅原文太・愛川欽也の『一番星ブルース』を歌唱した。その後も、トークで客席を楽しませながら、八代亜紀の『もう一度逢いたい』など演歌の名曲をカバー。闘病中に元気づけられたという矢沢永吉の『止まらないHa~Ha』も披露し、観客はタオルと無数のペンライトを振り大盛り上がりとなった。
圧巻の表現力を見せた恋慕譚『北の愛獄』
コンサート終盤、この日の大きな見どころになったのは「恋慕譚『北の愛獄』」。オリジナル人気曲『心かさねて』『さいはて海峡』をアコースティックアレンジでしっとりと歌唱した後、ステージ上でアイボリーの着物から漆黒の着物ドレスに早着替え。激しく舞い散る雪の中で『雪恋華』を熱唱する姿は、母一人子一人で育った娘が恋に身を焦がし、やがて堕ちてゆく悲恋そのもの。迫真の演技と圧巻の歌声に、会場が息を呑んだ。
ステージの転換中には「メイク動画」がスクリーンに映し出され、演歌歌手のメイク方法について真面目に語られるのかと思いきや、お笑い好きの市川がコウメ太夫に扮してネタを披露する場面も。会場中が笑いに包まれた。
再びステージに登場した市川は「今日は新たな歌手人生の第一歩をこのステージでまた見出すことができました。これからは、その思いを言葉にして、歌に乗せて、そして皆さまの耳から心に届くような、そういう歌が届けられるように、大好きな歌の道を歩んでいきたいと思っています。これからさらに精進してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます」と感謝を伝え、最新曲のカップリング曲『オリガミ』を披露した。
フィナーレには最新曲『朧』を情感たっぷりに歌唱し、万雷の拍手に包まれてステージは終演。今年のリサイタルコンサートは、オリジナル曲からちあきなおみの歌世界、名曲ミュージカル、そして恋慕譚にいたるまで見どころ満載。市川由紀乃が紡ぐ深い表現力と歌への情熱が一つになり、誰にも真似できない唯一無二の歌世界を観客に届けた。
「いろんな経験があったからこそ届けられる歌や言葉がある」
開演前に公開リハーサルを行った市川は報道陣の前で『雪恋華』を熱唱。その後取材に応じた。
市川は「今日はリサイタルを開催できてとにかくうれしいです。復帰させていただいて、お客さまやファンの皆さまの前に立つ喜び、歌える喜びというのは感じさせてもらっている中で、2年ぶりのリサイタルということで、心が躍ると言いますか、ドキドキとワクワクといろんな思いがあって、とても新鮮な思いで舞台に立たせていただきます」と意気込み。
サブタイトル『新章』に込めた思いについて「新たな歌手人生の始まりや自分自身の決意をリサイタルのタイトルにしたいと思っていたので、このタイトルしか浮かびませんでした」と明かした。
9月に発売した新曲『朧』新装盤・星月花盤については「新曲『朧』のレコーディングの時に、作詞家の松井五郎先生が、雪、月、花をイメージして『花わずらい』『ノクターン』『朧』を書いてくださったというお話を伺いました。ですので、それを1枚のCDにして皆さまに松井先生の詞の世界を感じていただきたいと思いました。このような形で発売できてうれしいです」と制作秘話を語った。
また、現在の体調について「おかげさまで少しずつ前に進んでいると思います。まだ抗がん剤の副作用で手足の指のしびれが残っていますが、いつか必ずとれると先生に伺っているので、それを前向きに捉えて、楽しみながらというか、いつか取れるんだからという思いでいます。髪の毛も伸びてきていますが、今日はウィッグをつけるので少しだけ整えてきました」と明かしていた。
さらに、闘病中の思いをどのように歌に込めて伝えていきたいかと聞かれ、市川は「昨年の今頃は抗がん剤治療をしていたので、自分の中でもまだ不安な気持ちがあったり、実際にまた戻れるのだろうかという気持ちもあったり、そんな日々を過ごしていました。1年後にこのように舞台に立って、リサイタルを開催させてもらって歌えているということが、自分にとっては本当に夢のようで奇跡です。いろんな経験があったからこそ届けられる歌や言葉があると思っています。『新章』というタイトルの通り、新しい市川由紀乃を感じていただきたいですね」と思いを明かしていた。
圧巻のステージを見せ、歌手として新たな一歩を踏み出した市川由紀乃。そのさらなる飛躍に期待したい。
市川由紀乃『朧』
星月花盤
発売中
品番:KICM-31182
価格:¥1,500(税込)
【収録曲】
1.朧(作詞:松井五郎/作曲:幸耕平/編曲:佐藤和豊)
2.ノクターン(作詞:松井五郎/作曲:幸耕平/編曲:佐藤和豊)
3.花わずらい(作詞:松井五郎/作曲:幸耕平/編曲:佐藤和豊)
4.朧(オリジナル・カラオケ)
5.朧(一般用カラオケ・半音下げ)
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