愛しのレコードジャケット<演歌ディスコ編 #2>

2019.9.6

前回は「演歌ディスコ」と題して、ちょっと変わったディスコレコードを紹介した。
ディスコが流行したのは、私が高校生の頃である。
ミラーボールがクルクル回るホールの中央でジョン・トラボルタのようにビシっとポーズを決める、そんな格好良さに憧れてはいたが、ディスコクラブで踊るなんて田舎の高校生には敷居が高すぎる。
もし勇気をふりしぼって行ったとしても、入口でマッチョなセキュリティにびびって元の道を引き返していただろう。
社会人になってからディスコのレコードを集め始めたのは、その反動なのかもしれない。
それでは今回も、混沌と魅惑の「演歌ディスコ」の世界へご案内しよう。

ディスコ河内音頭/椿秀春&キャプテン・フィンガー
作詞作曲:河内民謡

ディスコ河内音頭/バンブー・イン・ABA

河内音頭といえば関西の盆踊りの定番であり、「浪速のソウルミュージック」として老若男女から親しまれているので、ディスコカバーが出るのも必然といえる。
2曲ともテンポをアップしてノリの良いアレンジが施されているが、バンブー・イン・ABA盤にはビージーズの「ナイトフィーバー」やヴィレッジ・ピープルの「Y.M.C.A」が一部挿入されるなど、より凝った構成になっている。

SUKIYAKI/ディスコギャング
作詞:永六輔 作曲:中村八大


坂本九の「上を向いて歩こう」は、ビルボード誌で日本人初の1位を獲得するなど海外でも人気が高く、当然ディスコバージョンも存在する。
このレコードで特筆すべきはジャケットで、特徴あるイラストは江守アイ氏によるもの。
ディスコマニアの江守氏は、「ソウル・イラストレーター」として多くのディスコレコードのイラストを手がけていて、それだけ集めているコレクターもいるくらいだ。

ディスコ帰って来たヨッパライ/インベーダー
作詞:ザ・フォーク・パロディ・ギャング 作曲:加藤和彦


ザ・フォーク・クルセダーズの大ヒット曲をディスコアレンジしているが、オリジナルと同じようにボーカルがボイスチェンジされていて、オリジナルの面白さを踏襲している。
それにしてもフォークソングまでディスコ化するとは、ディスコ人気恐るべしである。

ディスコハートのエースが出てこない/クリスタル・スリー
作詞:竜真知子 作曲:森田公一


昭和の国民的アイドルグループ「キャンディーズ」といえばこの曲で、ディスコカバーはその人気に便乗した企画とも言えるが、歌っているクリスタル・スリーは本格派女性ボーカルグループであり、素晴らしいコーラスを聞かせてくれる。
こういうディスコカバーなら大歓迎である。

ディスコ翔んでる寅さん/渥美清・フィーリング・フリー
作詞作曲:さかい夢裕 台詞・構成:山田洋次


ディスコ化の波は映画界にも押し寄せていた。
「男はつらいよ」の寅さんをモチーフにしたディスコソングだが、歌っているのは女性ボーカルグループのフィーリング・フリーであり、渥美さんはもっぱら曲間のセリフのみだ。
さすがにちょっと無理のある企画だが、渥美さんの小気味良いセリフや唯一歌っている「シャバダバダ♩」の部分だけでも聴く価値大ありだ。

ディスコ軍艦マーチ/ネイビー・ブルース
作曲:瀬戸口藤吉


オリジナルの「軍艦行進曲」は、昭和時代のパチンコ店のBGMとしても有名な曲だが、ディスコブームも軍歌までカバーするとは、来るところまできた感がある。
ディスコカバーとしてはあまり特徴もないが、イベント等でこれをかけると意外に盛り上がるので、ひょっとすると隠れた名盤なのかもしれない。

さて、これから演歌ディスコをガンガンかけながら”フィーバーフィーバー”しようと思っていたら、テレビから「サライ」が流れてきてしまった。
そろそろ「夏の終わり」(by森山直太朗)である。
次回はガラッと雰囲気を変えて、妖しい「ムード歌謡」のレコジャケをご紹介しよう。

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