愛しのレコードジャケット<ムード歌謡編#1>

2019.9.20

天高く馬肥える秋?…いやいや、天高くスマホの音源増える秋である。
「風立ちぬ」、「秋桜」、「セプテンバー」など秋らしい曲が聞きたくなる季節だ。

さてそんな秋の気配が感じられてきた今回は、「ムード歌謡」を紹介しよう。
ムード歌謡は、昭和に生まれた歌謡曲のジャンルである。
ハワイアンやブルースの要素を取り入れるなどポップスに近いが、演歌寄りのムード歌謡もあり、一概に演歌と分けることは難しい。
また、ムード歌謡の多くは経験豊かな男女の恋愛が主題となっている。
夏の海ではしゃぐ少年少女ではなく、チークダンスで身体を寄せ合うような大人の男女を主人公として、道ならぬ恋や一夜限りのロマンスなど、濃厚な恋愛ドラマが繰り広げられているのだ。

今回は、そんなムード歌謡の魅力についてヒット曲を中心にお伝えしよう。

『誰よりも君を愛す』/和田弘とマヒナ・スターズ 松尾和子
作詞:川内康範 作曲:吉田正


イントロのスチールギターが印象深いムード歌謡の王道的1曲。
和田弘のテナーボイスと松尾和子の甘えるような歌声が、聴くものを甘美な世界へといざなってくれる。

『長崎は今日も雨だった』/内山田洋とクールファイブ
作詞:永田貴子 作曲:彩木雅夫


ムード歌謡にはご当地ソングの名曲が多い。
クールファイブ最大のヒット曲であるこの曲も、男女の恋愛をテーマに長崎の情緒ある景観を歌っている。
クールファイブは、他にも「そして神戸」や「中の島ブルース」など多くのご当地ソングをヒットさせている。

『伊勢佐木町ブルース』/青江三奈
作詞:川内康範 作曲:鈴木庸一


何といっても青江三奈の艶っぽい吐息がインパクトある曲だが、あまりの色っぽさに「子どもへの教育上良くない」とクレームがはいったとか。
明治時代からの繁華街である伊勢佐木町の情景を織り込みながら、男女の恋の行方を青江三奈のハスキーボイスが歌いあげている。

『骨まで愛して』/城卓矢
作詞:川内和子 作曲:文れいじ


むせび泣くようなサキソフォーンが印象深いブルース調の曲である。
城卓也は、「骨まで愛してほしいのよ」という情念のこもった歌詞を切々と歌い大ヒットとなったが、あまりにヒットしたため後に同名の映画まで制作された。

『圭子の夢は夜ひらく』/藤圭子
作詞:石坂まさを 作曲:曽根幸明
『キンキンの夢は夜ひらく』/愛川欽也

現在では宇多田ヒカルの母というイメージの藤圭子だが、美しい顔立ちながら影のある表情で「あたしの人生暗かった」と歌う姿は、今でも昭和歌謡ファンの心を捕らえて離さない。
愛川欽也バージョンは、映画「トラック野郎・望郷一番星」の挿入歌で、一部歌詞を書き換えられている。
キンキンの歌声はやや高いが、藤圭子のハスキーな声とは違った魅力がある。

『別れても好きな人』/ロス・インディオス&シルヴィア
作詞作曲:佐々木勉
『別れても好きな人』/ベン&あかね(佐々木勉&亜紀あかね)

「コモエスタ赤坂」などのヒットで知られたロス・インディオスとシルヴィアのデュエット曲。
当時20代のシルヴィアとロス・インディオスのボーカル棚橋静雄がデュエットする姿は、訳ありな感じで妙に引き込まれてしまう。
ベン&あかねバージョンは、作詞作曲の佐々木勉が亜紀あかねとデュエットしたもの。

『アマン』/菅原洋一&シルヴィア
作詞:杉紀彦 作曲:森田公一


ロス・インディオスから独立したシルヴィアと、「今日でお別れ」の菅原洋一が歌ったデュエット曲。
シルヴィアの切ない歌声と菅原の甘いテナーボイスは相性抜群。
「アマン」とはフランス語で「愛人」という意味で、道ならぬ恋を綴った歌詞もすばらしい。
「この写真、奥さんに見つかったら絶対揉めるよなァ・・」と思わせるジャケットも含めて大好きな1枚である。

今回はヒット曲を中心にムード歌謡の魅力を伝えた。
次回は、「上級編」として、ちょっと変わったムード歌謡を紹介しよう。

この特集の別の記事を読む