愛しのレコードジャケット<三波春夫と音頭>編#番外編

2019.5.17

アナログレコードをこよなく愛するコレクター・もりしげゆき氏が、ジャケットデザインという観点から、演歌・歌謡曲のレコードを紹介する特集「愛しのレコードジャケット」。
歌謡界に多くの金字塔をうちたてた国民的歌手・三波春夫が歌った数々の「音頭」をテーマにした特集の第4回目は、番外編として意外な人が歌う音頭を紹介する。

こんな人まで?!な意外過ぎる音頭たち

中古ショップやインターネットの通販でレコードを探していると、さまざまな音頭があることに気づく。
ふるさとで歌い継がれた民謡からアニメのエンディングテーマ、自治体が何かの記念に制作したもの、そして俳優やスポーツ選手などが歌ったものまでさまざまだ。
特に「え?あの人がこんな歌を!」というものを発見したときは、思わず興奮して値段も見ずに買ってしまう。財布の中身はだいぶさびしくなるが気にしない。
今回は、私がこれまでに出会った、意外な人が歌う音頭をいくつか紹介したい。


小川直也「ハッスル音頭」
作詞:”キャプテン・ハッスル”小川直也/作曲:原田憲

和泉元彌など有名人が参戦して話題になったプロレス団体「ハッスル」で活躍した小川直也が歌った音頭。
オリンピック柔道銀メダリストで、格闘家転向後は「暴走王」として恐れられていた小川だが、こんなご陽気な音頭を歌うとは思わなかった。
小川自ら作詞をしていることから、こういうパフォーマンスも決して嫌いではないのでしょう。ハッスルハッスル!


平野レミ「カモネギ音頭」
作詞:吉岡治/作曲:了瑛頁

大胆かつ独創的な調理方法で常にファンを驚かせる料理研究家平野レミ先生の音頭。
以前、ある番組でレミ先生が料理を作りながら、「あたし昔歌手だったのよ。デビュー曲が音頭でね」と突然話し出し、それを聞いた私はいてもたってもいられずネットを検索しまくり、何とかこれを入手できたのであった。


渥美清「寅さん音頭」
作詞:星野哲郎/作曲:米山正夫

渥美さん主演の映画といえば「拝啓天皇陛下様」など良い作品がたくさんあるが、一般的にはやはり「男はつらいよ」になってしまう。
曲は音頭としてはややゆったりとしたテンポで、渥美さんの美声をじっくり聞くことができる。
歌詞にあの名セリフ「それを言ったらおしまいよ」が入っているのもうれしい。


松平健「松健音頭」
作詞:星野哲郎/作曲;市川昭介松平健芸能生活10周年記念特別公演で歌った音頭。
曲は実際に会場で録音されたもので、マツケンの登場に大きな拍手が沸くなどライブならではの臨場感あふれる音源になっている。
マツケンといえば大ヒットした「マツケンサンバII 」が有名だが、音頭もノリが良くて会場の熱気が伝わってくるよう。


小沢昭一「父チャン音頭」
作詞/作曲:小沢昭一

昭和の名優小沢昭一さんが、世の中の父チャンたちのカラ元気と哀愁をコミカルに歌った音頭。
作詞作曲も小沢さん自身が手がけている。
ジャケット写真だけで中高年父チャンの悲哀を感じさせるのはさすがです。


大竹しのぶ「かまっておんど」
作詞:つかこうへい/作曲:中村弘明

フジテレビの子ども番組「ひらけ!ポンキッキ」から「およげたいやきくん」など数多くのヒット曲が出ているが、これもその一曲。
赤ちゃんや酔っぱらったパパのお世話で忙しいママにかまってほしいという子ども心を、大竹しのぶさんが音頭に乗せて歌い、番組を見ていた多くの子どもたちの共感を得た。
現在は大女優の貫録を持つ大竹さんだが、この頃はアイドル的でかわいいというイメージでした。

 

これまで全4回にわたり、三波春夫の楽曲を中心にさまざまな「音頭」を紹介してきた。
中にはレアなレコードもあるが、こうしてジャケットを眺めながら曲を聞いたり、同じ趣味を持つ人とそのレコードを酒の肴に語り合ったり、イベントで曲をかけてお客さんが喜ぶ顔を見るのも楽しい。
そういうことをくりかえしているうちに、ますますレコード収集にはまっていくのだ。
最近は俳優やスポーツ選手も音頭どころか歌自体あまり出すことも無くて残念だが、売り上げ枚数など気にせずどんどん歌ってほしいものだ。

(写真提供・文/もりしげゆき)

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