愛しのレコードジャケット <洋楽の日本語カバー> 有名人編

2019.5.24

元号が平成から令和に変わっても、相変わらず昭和のレコードを集め続けている。
我ながらどうかと思う気持ちが半分、幸せ気分半分である。

さて、前回まで三波春夫や意外な人物の音頭を紹介したが、今回はガラッと趣向を変えて、「洋楽の日本語カバー」に焦点を当ててみよう。

10代の頃、私は洋楽に夢中になっていた。
学校の友人たちと集まっては、ビートルズが一番だ、いやいやストーンズだろう、何を言うかクイーンを聴いてみろ、待て待てディープ・パープルというすごいのがいるぞ、何コラ!ビリー・ジョエルを知らんのか?と、ジャンルや時代に関係なく自分の推しアーティストの素晴らしさを主張していた。
しかし、私と友人に共通していたのは英語が苦手なことだ。
学校では英語の授業なんて真面目に聞いちゃいないし、口では偉そうに語っていても英語の歌詞の意味をあまり理解していなかったと思う。
そうした英語コンプレックスが影響したのか、大人になった私は洋楽の日本語カバーに興味を持ちコレクションを始めたのである。

50~90年代の洋楽カバーブームの移り変わり

さて洋楽カバーの歴史をみると、戦後のジャズブームなど洋楽への注目が高まり、50~60年代に山下敬二郎「ダイアナ」、坂本九「ステキなタイミング」、弘田三枝子「ヴァケーション」などの数々のヒットが生まれる。
70年代にはベンチャーズのインストゥルメンタルに日本語歌詞をつけた「京都の恋」を渚ゆう子が歌い、ビレッジピープルの「YMCA」を西城秀樹が「ヤングマン」としてカバーし歌謡史に残る大ヒットとなった。
80年代には映画「フットルース」の挿入曲「ヒーロー」「ネバー」のカバーにより、麻倉未稀、葛城ユキ、元ピンクレディーのMIE など実力派歌手が評価され、さらに荻野目洋子が「ダンシングヒーロー」、Wink「愛が止まらない」など女性アイドルによるヒットがあった。
そして90年代になると「深紫伝説」の王様による直訳ロックがブームになるなど、洋楽の日本語カバーは時代ごとに音楽ファンに愛されている。
一方で、ヒットこそしなかったが意外な人物が歌っていたり、世界的大ヒットした映画音楽やダンスミュージックに日本語の歌詞をつけて歌い独特な世界観を作り出すなど、変わったカバー曲も存在する。
そういう盤を中古レコード店の棚で発見すると、思わずガッツポーズしたくなる。
日本語カバーの世界は奥が深いのだ。

「え?あの有名人が?」的な洋楽の日本語カバー

日本語カバーには、誰もが知っている有名人が歌うものも多数ある。
シリーズ第一回目は、私のコレクションから、意外なあの人が歌う日本語カバーを紹介しよう。

スター・ウォーズ/子門真人
作曲:ジョン・ウイリアムス 訳詞:有川正沙子

スター・ウォーズのテーマのディスコバージョンに日本語の歌詞をつけ、「およげたいやきくん」の子門真人が歌ったが、ジョージルーカスフィルムからクレームが付いて回収されたといういわくつきの日本語カバー。
「タモリ倶楽部」で取り上げられて話題になったこともある。

ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ/THE POLICE
作曲:Sting 日本語訳詞:湯川れい子

世界的なバンドであるポリスが日本語でセルフカバーするという、日本のファンには非常にうれしい1曲。
オリジナルのイメージのまま流ちょうな日本語で歌うポリスは、最高のアーティストだ。

いやんばか~ん・・・・/林家木久蔵
作詞:林家木久蔵 原詞・曲:W.C.HANDY

「笑点の黄色い着物のひと」こと林家木久扇師匠(当時は木久蔵)が、大喜利の回答で歌う「いやんばか~ん♩」は誰でも知っていると思うが、原曲が有名なジャズのスタンダード「セントルイス・ブルース」であることはあまり知られていない。

オペラ座の怪人/市村正親・野村玲子
作詞:CHARLES HART
追加作詞:RICHARD STILGOE & MIKE BATT
日本語詞:浅利慶太 作曲:ANDREW LLOYD WEBBER

ミュージカル「オペラ座の怪人」のテーマ「Phantom of the Opera」に日本語歌詞を付け、日本初演で主人公とヒロインを演じた市村正親、野村玲子が歌っている。
市村と野村の歌はレコード越しでも迫力を感じる。

レスラー/竹中直人
作詞:高平哲郎 作曲:鈴木宏昌

完全な日本語カバーではないが、マイケル・ジャクソン「スリラー」を連想させるメロディに竹中直人が持ちネタを絡ませて歌っている。
竹中の歌声が良く、「ビートイット」のパロディであるジャケットカバーも秀逸。

愛はMUSIC/畑中葉子
作詞:岡田富子,Keith Forsey 作曲:Giorgio Moroder

「カナダからの手紙」「後から前から」のヒット曲で有名な畑中葉子による、映画「フラッシュダンス」のテーマ「Flashdance What A Feeling」のカバー。
畑中のボーカルが曲のイメージにぴったりはまっていて、純愛のデュエットからお色気ソング、ダンスミュージックまでさらりとこなす畑中葉子はすごい歌手だと思う。

愛がメラメラ~SMOOTH~/GORO
作詞:山田ひろし 作曲:ITAAL SHUR & ROB THOMAS

1999年に郷ひろみが「ゴールドフィンガー’99」、西城秀樹が「バイラモス」と新御三家の二人がラテン・ポップのヒット曲をカバーするなかで、満を持して野口五郎がサンタナの「スムース」をカバーした。
得意のギターテクニックを存分に披露し、じっくりと歌いあげるゴローの魅力が詰まっている。

 

<洋楽の日本語カバー>シリーズの2回目となる次回は、「私のイチオシ・隠れた名盤編」として奇抜な企画など、マニア受けしそうなレコードを紹介したい。

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