中澤卓也 「僕の声が出なくなるまで歌い続けていきたい!」 チャンネル銀河で「中澤卓也コンサート ~5年分の引き出し 歌の和洋折衷~<洋の世界>」を放送!

2022.3.29

デビューから満5年の節目を迎え、2022年1月22日、23日に東京・日本橋三井ホールで「中澤卓也 2days コンサート~5年分の引き出し 歌の和洋折衷~」を行った中澤卓也。自身初となる2daysコンサートは、初日が和コース、2日目が洋コースと題し、演出もセットリストもまったく異なるステージを披露した。チャンネル銀河で4月17日に放送予定の洋コースを中心に、5年間の活動の集大成ともいえる2日間のステージを自ら振り返る。


今、自分が持っている歌の引き出しをすべて開けてみたい

――2daysコンサートは初めてということでしたが、どのような思いで臨みましたか。

デビューして満5年という節目を迎えたことで、自分としてはプロの歌い手として一つステップを上がったのかなという感覚がありました。そこへ6年目がスタートしてすぐに、こういうステージを踏ませていただけたことは、うれしさを感じると同時にとても身が引き締まる思いでした。これまで一日で昼夜2回公演は経験したことがありますが、2days公演は初めて。まったくテンションが違うんですよね。しかも今回のコンサートは、1日目と2日目で和と洋という世界観が異なる構成でしたので、自分自身、フルのパフォーマンスの状態をキープして歌いきれるかと不安も抱きつつ挑んだステージでした。

――和コースと洋コース、それぞれのコンセプトを教えてください。

今回、サブタイトルを「5年分の引き出し 歌の和洋折衷」とつけました。デビュー前の僕は、主にポップスやバラードを聴いて育ってきました。歌手としては演歌・歌謡曲のジャンルでデビューし、デビュー直後はムード歌謡や演歌が比較的多かったのですが、これまでさまざまなカバー曲に取り組む過程で、最近では演歌・歌謡曲のジャンルでもポップス寄りの曲を歌わせていただく機会が増えてきました。この5年間、スタッフやファンのみなさんに歌い手としての引き出しをたくさん作っていただいたという思いがありますので、今自分が持っているその引き出しのすべてを一度開けてみたいという気持ちで、このコンサートの構成を作り始めたんです。また、お客様のなかには、もっと演歌を聴きたいという方もいらっしゃれば、ポップス系の曲をたくさん聴きたいという方もいらっしゃいます。これまでは両方の曲を一つのコンサートで一緒に聴いていただいたのですが、2日間の構成を和と洋という完全に分けた選曲にすることで、どちらかを選択していただくパターンも面白いのではないかと思いました。

――和コースではステージ衣装で和装にも挑まれました。

ふだん和装はしないのですが、和コースの世界観を表現するために思い切って挑戦しました。若者に和服を普及させたいとお考えのショップのデザイナーの方が直々に着付けをしてくださいましたが、すごくおしゃれでしたね。女性の着物に使われるような飾りを採り入れてくださったり、履物も高さのあるものを用意してくださいました。歌いながら重心を保つのに必死でしたけど(笑)。和服を着てきちんと歌うのは初めてでしたが、いい経験になりました。お客様からも和装がよかったというお声をたくさんいただきました。

――今後も着物姿を期待してよいですか。

そうですね。僕もやってみてすごく楽しかったですし、今回、和と洋をはっきり分けたことで、歌の世界をとても伝えやすかったですね。一つのステージでスイッチを何回も切り替えていくよりは、和と洋、それぞれの世界観を凝縮してお届けすることは、聴いてくださるお客様にも伝わりやすいんじゃないかという手ごたえがありました。

――両日とも二部構成で、一部はオープニング曲を除いてカバーソング、二部とアンコールはオリジナルソングでした。洋コースのカバーソングのテーマは「愛」だとお話しされていましたが、カバーソングの前半4曲は『シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜』『セカンド・ラブ』『Squall』『ドライフラワー』と新旧のポップス系ナンバーが並びました。選曲はご自身ですか?

基本は演出家の方の選曲ですが、『ドライフラワー』など最近の楽曲については僕の意見を採り入れていただきました。『シーソーゲーム』は僕の中ではチャレンジでした。Mr.Childrenの曲はあまり歌わないのですが、まずキーが高いんです。今回は原曲の元キーでやらせていただきましたが、洋コースのカバーソングは、本当はキーを下げたほうがいいけれど、あえてそのままのキーでいかせてくださいと挑んだ曲が多かったですね。また、僕は普段、言葉と言葉の間(ま)をすごく意識して歌うのですが、『シーソーゲーム』は間を入れるところがほとんどないんです。桜井和寿さんの歌の特徴かと思いますが、とても長い詞をメロディーの中にギュッと落とし込んでいるので、特に『シーソーゲーム』のようなテンポ感のある楽曲だと、言葉と言葉の間が少ないんです。それをつらつら歌っても面白くないし、自分のエッセンスを入れながらやるにはどうしたらよいかとかなり考えました。間を置きすぎるとリズムが生まれず、あの曲を歌う意味もなくなってしまいますから。

――一つのカバーソングを習得するのにどれくらい歌い込むのですか。

デビュー直後は、自分が納得できる基準をクリアしようと突き詰めて取り組んでいたのですが、くり返し歌うことで作り込みすぎて、その歌がかえってつまらなくなっている可能性があることに気づきました。『シーソーゲーム』のようなテンポ感のある、楽しげな雰囲気がある曲こそ、いい意味でのちょっとしたすき間があるほうが面白く、聴いてくださる方たちにも伝わりやすいのではないかという思いに至りました。今は、曲のリズムとはねる歌に対してのピッチ感をつかんである程度歌えるようになれば、ステージで披露してもOKだと思っています。

体力の限界に挑んだバラード4曲の連続歌唱

――休みをはさまず続けて熱唱された、一部の後半4曲『雪』『行かないで』『伝わりますか』『カルチェラタンの雪』は圧巻でした。二部の最初のトークコーナーでこの4曲を一気に歌い終えたことで「体力が残っていない」とおっしゃるほどでしたね。

思い出すだけで具合が悪くなりそうです(笑)。あの4曲はいずれも1曲だけでも成立するくらいのエネルギーがある歌です。それを4曲並べたのは、かなり大変でしたね。

――ファルセットヴォイスを多用する玉置浩二さんの『行かないで』など、ヴォーカリストとしての力量が試されるような難しい選曲だったと思いますが、実際歌ってみていかがだったでしょうか。

『カルチェラタンの雪』以外は、初めて歌った曲です。『雪』は、はかなく消えそうなもの(人)に対する主人公の思いがつづられる歌なので、歌う際の熱量の感覚について頭を使いました。引きすぎても伝わらないし。ただ、『雪』で振りきると、次の『行かないで』のファルセットが死んでしまいますので、そこも計算して歌っていました。実は2019年の終わりから2020年の初頭にかけて、発声時の声帯にすき間ができる声帯委縮となり、裏声がうまく出なくなっていたんです。その頃は声帯がスパーンと抜けて、自分の意図していないところで声が裏返ってしまうような症状もあったので、最近はそれが出ないように声帯に圧をかけるような歌い方をしていました。裏声は力まずに息をたくさん抜いて歌うので、今回、演出家の方が提案してくださったセットリストに『行かないで』があるのを目にして、自分には歌えないだろうなと最初は思いました。でも、コロナ禍の状況でこのようなコンサートを開いていただけること、5年間の歩みのなかでのみなさんへの感謝の気持ち、そしてこれからもみなさんと一緒に夢をつかんでいきたいという思いを感じていただくためには、こういう挑戦が必要だと思ったんです。

――声帯に問題を抱えていたとは微塵も感じさせないパフォーマンスでした。

悔しかったのが、最後の最後までファルセットでいけなかったことです。リハーサルでは最後までいけていたんですけど、そこがライブの怖さでもあります。最後はファルセットにいかない発声で締めていると思いますが、あの夜、一番悔しい瞬間でした。でも、『行かないで』をクリアできたとことは大きな自信にもつながっています。

――そのような難曲のあと、さらに『伝わりますか』『カルチェラタンの雪』が続きました。

『伝わりますか』はデビュー前に歌謡曲を勉強していた頃、ちあきなおみさんバージョンで聴いていた曲です。このタイミングでこの曲にまた出会えたことがうれしかったですね。他の3曲ほどエネルギーを使わないで済むのですが、ここで落とし過ぎると次の『カルチェラタンの雪』でもう一度エンジンをかけなくてはならなくなってしまいます。僕の声帯は高音域でピークにもってきてから1回ゆるめると、戻すのに時間がかかってしまうので、『伝わりますか』の落とし幅と『カルチェラタンの雪』でのピークの持っていき方に気を使いました。もし『伝わりますか』でピークをもってきたら、逆に“伝わらない”ですから(笑)。本当に脳内をフル回転させたコンサートでした。『カルチェラタンの雪』も難しかったですね。サビにいくまでの前半部分は物語を読んでいるような感覚で歌わないと、収拾がつかなくなるんです。この曲はただリズムに合わせて歌っていくだけでは、あまり面白みを感じさせないメロディーで、言葉を早く走らせてみたり、ちょっと間を置いてから後を詰めてみることで、この曲の良さが出るんじゃないかと思って布施明さんの原曲を何度も聴いて研究しました。

次ページでは、新たな出会いで広がったという境地について明かす!

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