三刀流歌手・彩青の探求心は、伝統の大衆芸能から令和のポップス、世界の民族音楽まで!「彩青そのものが音楽でできています」

2022.4.20

民謡をもっと親しみやすく!細川一門の思い

――カップリングの『津軽よされ節』(青森民謡)は、どういう民謡ですか。

民謡を唄っていた頃に正式に習った曲ではないのですが、師匠も「この唄はいいよね」とおっしゃってくださった、本当に大好きで大切な一曲です。津軽五大民謡(他『じょんがら節』『おはら節』『あいや節』『三下り』)のうちの一つで、とても難しい曲なのですが、みなさんに民謡を聴いていただきたいという思いでカップリングに入れさせていただきました。師匠からも聴いていただいた方に「オッ」と思っていただける曲にしようと言っていただき、原曲からちょっとだけアレンジをして、覚えやすい彩青バージョンの『よされ節』になっています。

――演歌・歌謡曲だけでなく、民謡にも軸足を置く、彩青さんの志を感じる選曲ですね。

細川一門・細川流の考え方でもあります。民謡をもっと現代になじみやすい、親しみやすくなるように唄っていこうと師匠も強く意識されていて、民謡をとても大切にしてくださっています。『よされ節』を知っていますという方は少ないと思いますが、細川流としてアレンジを加えながら、ちょっとずついろいろな民謡を聴いていただこうという試みです。

世界の民族音楽、日本の大衆芸能の伝統から学ぶこと

――民謡をはじめ、さまざまな唄い方を身につけたいということですが、世界中の音楽も勉強されているそうですね。

今はアジア圏の音楽を主に勉強しているのですが、アジアにはアジアにしかないリズムの取り方があるんです。隣り合った日本と韓国でも違いがあって、たとえば北海道の『ソーラン節』の「ヤーレンソーラン」と韓国の『アリラン』の「アーリラン」という節回しを聴き比べても全然違いますよね。中国に行くと二胡などの独特な弦楽器があり、モンゴルには馬頭琴がある。モンゴルでは口腔内の共鳴だけで唄ったりするのですから驚きます。ヨーロッパに目を向けると、スペインのフラメンコは『よされ節』に近いイメージもあります。どの地域の音楽もなんとも言えない面白さがあるんですよね。試しに発声を真似てトライしてみるのですが、だいたいが難しいです (笑)。世界の音楽に限らず、三味線で一人の方が弾く音でも、10曲あったらすべて弾き方が違いますから、こうやって弾くんだ!と常に発見があります。

――三味線だけでも地域や芸事によってかなり異なりますね。

津軽三味線があれば、常磐津もある、清元、長唄、浪花節の三味線がある。最近は常磐津を聴いてみようかなと思っています。独特ですからね。三味線の音色だけではなく、常磐津の中で描かれる物語、歌でいうと詞の世界がとても豊かなんです。日本の伝統芸能を調べてみようと思って、落語や講談、浪花節も聴いています。調べれば調べるほど、日本でも知らないことだらけだなと思います。

――日本の大衆芸能を総なめする勢いですね。豊かな知識の裏付けがあると、日本の心を唄うときにも深みが違ってきそうです。

最近は三味線の源流までたどり始めました(笑)。中国から沖縄に入って三線になる。そこから北上して最終的に津軽まで来て、太棹になる。なぜこんなに調べるかというと、最近、三味線漫談が好きで、三味線漫談家の玉川スミさんの昔の映像を見ていたら、「都都逸というのが東京の代表的な唄でございますよ。こういうことを知らないと、いざというときお恥をおかきになるから勉強しておいてください」という言葉に、確かに!と深く納得して。自分は民謡のことを多少知っていても、他のことは一切知らないなと感じたんです。自分の音楽活動を見つめ直しても、三味線はどういうものだったのだろう? 尺八はどこから来たんだろう? 民謡の始まりってそもそも何? と、まだまだ調べることは山積みです。

昭和の演歌も令和のポップスも流行歌として同じ目線で

――伝統的な音楽を学ぶ一方で、YouTube「彩青チャンネル」では、最新のポップソングのカバーにも挑まれています。

ポップスにも新たな発見があります。演歌や民謡だけを聴いていると、絶対このリズムでは入ってこないだろうという間(ま)やテンポ感があるんです。徳永ゆうきさんもおっしゃっていましたが、たとえば米津玄師さんの『Lemon』で、「苦いレモンの匂い」の「苦い」をなんでこんなに短くするのとか。半間(ま)のところで唄が入ってきたりするんですよね。譜面上はきっちり合っていると思うのですが、それが我々の唄い方になったときに、へぇ、そこから入ってくるんだ!と勉強になることがいっぱいあります。

――ポップソングのカバーに対するファンの方の反響はいかがでしょう。いつものステージ上の彩青さんのイメージをいい意味で裏切るようなトライだと思いますが。

Official髭男dismの『Pretender』を唄わせていただいたときは、ファンのみなさんにもそう来たか!と大変喜んでいただきました。現代のポップスも流行歌、三橋先生の『哀愁列車』も当時の流行歌で、すべて時代時代に即した流行歌なわけですから。どのような音楽に触れても、流行歌はすべて勉強ですね。

――先日は「彩青チャンネル」で、二見颯一さんと初のトークライブ生配信を行いました。7月7日には大阪・新歌舞伎座で、お二人に加え、青山新さん、辰巳ゆうとさん、新浜レオンさんによる「我ら演歌第7世代!スペシャルコンサート」も開催予定です。

それぞれ所属する事務所もレコード会社も異なる5人ですが、演歌離れが叫ばれる時代にあって、演歌・歌謡曲界をもっと盛り上げたいという思いで結集しました。この5人が一堂に会するのは、昨年11月が初めてだったのですが、回を重ねるごとに和気あいあいとした雰囲気になっています。みなさんと力を合わせ、演歌・歌謡曲の世界に新しい波を起こしたいですし、七夕のコンサートも楽しみです。

次ページでは、最近夢中になっていることや20歳の意気込みについて語る!

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