三刀流歌手・彩青が20代最初のシングル『望郷竜飛崎』をリリース 「大人になった彩青の世界をぜひ聴いていただきたいです」

2023.4.19

唄、三味線、尺八を操る三刀流歌手の彩青が、4月19日に約1年ぶりのニューシングル『望郷竜飛﨑』(作詞:原文彦、作曲:四方章人、編曲:西村真吾)をリリースする。細川たかしに師事し、弱冠16歳で歌手デビューを果たした彩青にとって早くも4作目のシングル曲となる本作は、<望郷>の思いを胸に抱くさすらい人の心情を歌い上げた本格演歌。20歳の節目にふさわしい大人の歌声が響きわたる、彩青の新たな歌世界を広げた作品に仕上がった。歌い手として次のステップを踏みだす『望郷竜飛﨑』への挑戦、細川一門として、また演歌第7世代としての思いを語る。


師匠のはからいで生まれて初めて飲んだお酒は…

――昨年の8月29日に20歳を迎えられて約半年、生活や心境に変化はありましたか?

10代とのいちばんの違いはやっぱりお酒を飲めるようになったこと。自分の心の内としては、ガラッと変わったところはなく、16歳でデビューさせていただいたときの夢や希望に満ちあふれた初心を持ち続けています。北海道から上京して、自分の歌で全国のみなさんに笑顔を届けられるといううれしさが今もずっとあります。

――お酒は成人されて、すぐに飲まれたのでしょうか。

ちょうど20歳の誕生日が細川たかし師匠とお仕事させていただいた日で、彩青はどんなお酒が合っているのだろうと、小さなグラスで何種類か飲ませていただきました。師匠からは、ビールの苦みが嫌いになるといけないので、最初は飲みやすいお酒がよいだろうとおっしゃっていただき、レモンサワーのようなサワー系のお酒を少しずついただきました。

――演歌にはお酒にまつわる作品も多く、大人の世界を実体験することで、今後、歌への気持ちの込め方も変わっていきそうですね

ふだんはほとんど飲みませんが、仕事が続いて疲れがでた休日の前日などに、口にするようになりました。それこそ演歌を聴きながらお酒をいただくと、演歌の世界のカギをまた一つ開けられるような気がします。

自分の心情とリンクする『望郷竜飛﨑』の世界観

――新曲の『望郷竜飛崎』は骨太な本格派の演歌です。完成した現在の気持ちを聞かせてください。

望郷の津軽演歌ということで、これはまさしく僕の歌だなと思いました。三味線にもこだわった曲で、ステージでは三刀流の一手、三味線を弾きながら披露できる最高の一曲に出会わせていただいたと思います。大人になった彩青の世界をぜひ聴いていただきたいです。津軽を舞台にした演歌をまた歌わせていただけることがうれしいですし、本当に大好きな一曲です。

――両親を思いながらも、故郷に錦を飾れない苦しい男の胸の内を歌われていますが、この作品の世界観を表現するのに力を入れた点は?

僕も故郷の岩見沢を離れて、全国で歌わせていただいていますが、ふとした瞬間にふるさとが恋しくなることもあります。民謡の稽古に通わせてくれたことなど、仕事が忙しい中、両親がいろいろ自分にしてくれたことや幼かったころの思い出がよみがえり、20歳となった自分を歌詞とどこか重ね合わせながら、この曲を歌っています。

――ご自身の心情とリンクしてくる部分もあるのですね。

『望郷竜飛崎』は、自分自身とマッチする歌詞が結構あります。2番の歌詞には、会えない人たちの面影を抱いて、夢で帰ろうかというフレーズがあるのですが、ふるさとの両親や友人などを思い、歌っていてもこの歌詞はジーンときます。

――アーティスト本人が感動するくらいの曲と出会えたのはうれしいことですね。

うれしいですね。まだまだ新人で駆け出しですけれど。3番にある、吹雪の向こうにある「春」を目指してがんばるぞという、自分の決意も込められる一曲だと感じています。

――『望郷竜飛崎』は、歌い始めをしっとり抑え目で入るなど、今までにない歌唱だと感じました。

どうしてもゴロゴロゴロと節を回したくなるので、それをぐっと抑えて、いいところで回して、作品の世界観をより深く表現するという点に気を付けました。細川師匠からも事前に作品の雰囲気を節で消さないように、歌詞を大事に歌うことを教えていただきました。歌い手として新たな一歩を踏みだす挑戦をさせてもらったという感じです。今回初めて、レコーディングに、師匠が立ち会われませんでしたが、それはプロの歌手として自分の個性を発揮するため、独り立ちの場を与えていただいたものと感じています。

――曲が完成されて師匠からは何かお言葉はありましたか。

“彩青も20歳になって、少しずつ成長してきているところがあるよね”と言っていただきました。また、これを一歩ずつ磨きなさいとも。師匠がいつもおっしゃることですが、本当に歌の世界はこれでいいということはないのだから、今まで歌ってきた曲もこれから歌う曲も、どこまでも「この一曲」を磨いていかなければならないと心に銘じています。

――どんどん磨き上げられたていった未来の『望郷竜飛崎』が楽しみです。

ちょうど20歳で発売させていただく『望郷竜飛崎』が、30歳、40歳、50歳となったときにどう変わっていくか。自分の成長を感じていただけるような曲にできればと思います。

――彩青さんはデビューが早かった分、ファンの方も足跡をご覧になるのが楽しいでしょうね。

デビュー当初から応援してくださっている方々は、歌だけではなく、顔の雰囲気もだんだん大人っぽくなってきたなあ、背もちょっと高くなったねとおっしゃってくださいます。本当にこの4年間で背も伸びたんです(笑)。

望郷演歌の系譜を残していきたい

――望郷演歌を歌うにあたり、インスパイアされた曲や参考にした作品はありますか。

望郷という意味では、師匠の『望郷じょんから』がまず挙げられます。ほかに師匠の作品では、2020年の民謡アルバム『民謡のこころ』に収録されている『津軽残照』という曲もあります。また、三橋美智也先生の『望郷江差』。こういうふうに歌ったらいいのかと、過去の名曲を聴くことで、歌の味や雰囲気を肌で感じるようにしています。

――過去の名曲への敬意を土台に、新たな味をつけていくことで、彩青さん流の望郷演歌が生まれそうですね。

過去の大先輩方が残してくださった名曲の中には「望郷」とつく作品がたくさんあります。その系譜のうえで彩青も望郷演歌をやらせていただくことは、うれしくもあり、望郷演歌というジャンルを残していくためにもがんばらなければいけないと思っています。ぜひともみなさんにも『望郷竜飛崎』を聴いて、両親やふるさとへ思いを馳せていただければと思います。

――サウンドはロックテイストを取り入れるなどポップですね。

最初は、1番が終わったところの間奏がもう少ししっとりした感じのサウンドだったんです。それはそれで素敵だったのですが、もう少しリズム感をもちたいということで、レコーディングの時にドラムを少し変えさせていただきました。

――YouTubeでポップスの曲に挑んだ成果がでているのでしょうか。

そうかもしれません(笑)。自分の歌の世界観だけではなくて、ポップスをはじめ、多様な音楽を聴き、実際歌ってみることで勉強させていただいています。ロックはほとんど歌いませんが、X JAPANの『紅』は歌ってみたことがあります(笑)。Toshiさんはどうやってあの声を出しているのだろうと思いました。

――今回の収録曲は、カップリング曲も含め、三味線にこだわった曲が揃っています。『望郷竜飛崎』の音源の三味線を担当した三山貢正さんによる演奏の魅力は?

三山さんの演奏は、津軽三味線でありながら、どこかちょっと甘い音がするんです。だからふるさとを思う心がすっと入っていくとでもいうのでしょうか――音色に力強さがありながらどこかやさしさもあるんです。僕が弾くと若さや勢いを求めていく感じになります。同じ楽器でも奏者の方一人ひとりで音色は違います。今回の収録3曲は、『津軽じょんがら節』が細川貴義さん、『津軽三味線ひとり旅(ロングヴァージョン)』が自分と、三味線の奏者が違うのも楽しいところです。

――『望郷竜飛﨑』のカラオケでの歌い方のポイントを教えてください。

決めポイントは、1番の歌詞でいうと、サビに入っていく「唸る」を、大きく回して迫力を出していただくといいと思います。続く「荒ぶる」と合わせて壮大な感じで。そのあとの1行は勢いを落として切なく歌い、最後の曲名でもある「望郷竜飛崎」で再びドーンと上げていくという感じです。

衣装一つにも細川流を継承する思い

――ジャケット写真は茶系の着物で、大人の雰囲気があります。

この衣装はすべて細川師匠からいただいたお着物で、実際にステージ衣装として身に付けられていたものです。細川一門として衣装一つとっても弟子として継承するという意味も感じています。一門の弟子で、師匠の衣装をそのまま着られる男は僕だけなので、師匠が築かれた道を受け継いでいけるようにがんばりたいなという思いがあります。

――前回の「うたびと」のインタビューでは、民謡を多くの方に伝えたいという細川流の思いからカップリング曲に民謡を収録されているとうかがいましたが、今回は津軽五大民謡の中でも代表格の『津軽じょんがら節』(青森民謡)ですね。

今回は、細川師匠がリリースされたヴァージョンのサウンドを使っています。一般的な三味線一挺での「じょんがら節」とは異なり、ライブ感あふれるバンドサウンドですので、初めて聴いてくださる方でも民謡の良さに入り込みやすいと思います。古来の形を大切にしながら、今の世代の人たちに民謡に親しんでいただくのが細川一門の民謡です。歌詞もオーソドックスに近いもので、三橋先生もよく歌われていたパターンの歌詞です。細川師匠もこの歌詞で歌われていて、僕が歌うことで3代にわたり「じょんがら節」を歌わせてもらえるのは最高にうれしいことです。

――もう一つのカップリング曲『津軽三味線ひとり旅(ロングヴァージョン)』(作詩:冬木夏樹、作曲:四方章人、編曲:伊戸のりお)は、ご自身で三味線を弾かれています。過去にシングルカットされたヴァージョンとどこが違うのでしょうか。

歌などは2ndシングルと同じですが、間奏で三味線をめいっぱい弾く、ステージでご披露しているヴァージョンを新たに収録しました。聴きどころは、もちろん間奏の僕の三味線です。ステージを重ねてきたことで、だんだんフレーズも変化してきたので、なるべく今に近い形で新たに演奏し直しました。ありがたいことにカラオケ好きの方に、『津軽三味線ひとり旅』がよく歌われているんです。本当にこの曲を大事にしていきたいという思いから、今回のカップリングに入れさせていただきました。

――細川流といえば、同門の田中あいみさんが、彩青さんに続き、昨年のレコード大賞新人賞を受賞されるなど活躍されていますね。

杜このみさんが北海道で民謡出身、僕も北海道で民謡出身、細川師匠も北海道。あいみちゃんは京都出身で歌謡曲畑ということで、一門にとって新たなカラーが加わり、幅広くなったなと思います。

――お互いの相乗効果がありそうですね。

どうしても民謡系の演歌、どちらかというとこぶしコロコロの演歌ばかり聴いてきたので、あいみちゃんが一門になったことで、なるほどこういう歌もあったのかと視野が広がりました。あまり馴染みのなかった桂銀淑さんの曲なども聴くようになりました。逆にあいみちゃんから「兄さん、こぶしってどう回すの?」なんて聞かれたりもします。兄さんと言われながら、年は2歳下なんですけどね(笑)。

若い世代に演歌の魅力を伝える「演歌第7世代」

――3月には、名古屋の御園座で細川一門と吉本新喜劇とのコラボによる公演がありました。新喜劇にも挑戦されたそうですね。

初めて尽くしの経験でした。お芝居自体は、師匠の45周年記念公演でチャレンジしたことがあったのですが、そのときとはぜんぜん違う新喜劇ということで、ボケやツッコミなど間の取り方も最初は分からないことだらけでした。本番では台本にないこともアドリブ合戦で突然始まることがあって、それを見て一人舞台上で笑い転げているという感じでした(笑)。

――辰巳ゆうとさん、二見颯一さん、新浜レオンさん、青山新さんとの「演歌第7世代コンサート」も回を重ねています。お互いの関係性の変化や新たな気づきはありますか?

チームとして団結力が増し、呼吸が合ってきています。第1回は、まだお互いどこかぎこちなかったのですが、今では楽屋でも和気あいあいとしています。先日のコンサートでは楽屋が皆一緒だったので、メイク中の辰巳さんに遊んでいただきました。第7世代全員が20代で、10~30代の若い世代の方に演歌をどうやって広めていくかをメンバーみんなが考えています。演歌は日本人の心の拠り所の一つだと思いますので、いい歌がたくさんあることを知っていただけるようにがんばりたいです。

――昨年は20歳の記念に富士登山に挑戦されました。悪天候のため、新7合目で登頂を断念されて残念でした。

山開きからなるべく早い時期、台風シーズンの前に行った方がいいことを学びました(笑)。歌いながら登りましたが、富士山は登山道が整備されていて登りやすかったです。天候のよい時期に、またチャレンジしたいですね。

――彩青さんは日々ワールドミュージックや大衆芸能などを研究されていますが、最近はまっているものはありますか。

最近は浪曲です。浪曲の節を研究しています。民謡の節だけではなく浪曲のいい節も自分のものにして演歌に活かしたいと思って勉強しています。初代京山幸枝若さん(1926-1991)や、中村美律子さんのお師匠さんでもある二代目春野百合子さん(1927‐2016)など、昔の人たちのよい節で勉強させてもらっています。

自ら修理する三味線へのこだわり

――三味線のばちを自ら作っているとおっしゃっていましたが、そろそろ三味線を丸ごと一から作りそうですね。

軽い修理だったら自分でします。三味線は繊細なので、ちょっとしたことで先端のほうが欠けたりするんですね。本来は膠などでちゃんとくっつけるんでしょうけど、今あるもので修理して、なるべく傷も分からないようにします。それはもう楽しいですね。

――三味線の修理といえば、ブログに秩父の三味線工房に行かれたことを書かれていましたね。

ふだんステージで使用している三味線の皮の張り具合を調整していただきました。弦や棹など様々な種類があるのですが、三味線は最終的には皮の張りが大事です。そのバランスで音色が全く変わるので、こだわっています。

――前回のインタビューでうかがった修理に出されていた、明治時代の三味線はどのような音色だったのでしょう。

もともとは義太夫の三味線で棹と胴の高さが少し違ったので、義太夫から津軽三味線の仕様に直しました。生まれるはるか前の明治時代のことはぜんぜん知らないわけですが、その時代を感じるようなめちゃくちゃ響きのいい楽器でした。ステージでは使う三味線ではありませんが、機会があれば弾かせていただきたいなあと思っています。

――公式プロフィールでは、趣味に景色を見に行くことも挙げていますね。

ここ最近はなかなかゆったりと出かけることはできていないので、三味線を受け取りに秩父に行ったくらいです。秩父鉄道の波久礼駅から歩いて10分くらいのところにある工房ですが、本当にここが三味線工房かと思うようなたたずまいなんです。すべて手作業で仕事されている様子をインスタの動画で拝見して、気になって数年前にうかがったのが最初です。

――生まれて20年間でいちばん感動した風景はなんでしょう。

鮮明に覚えているのは道東の流氷です。子どもの頃に流氷に乗ったんです。周り一面、本来は海であるところが流れてきた氷でいっぱいになっている。とても感動しました。上京してからは、3月には満開になっている桜ですね。北海道ではゴールデンウィークにやっと満開になりますから、3月に桜が咲いていると知ったときには、びっくりしたと同時にうれしかったです。僕は山を見るのも好きなんです。だから新幹線から見る富士山や仕事で鹿児島に行ったときは桜島など、出かけた先で山の稜線を眺めています。

――20代になって今後10年どのような歌い手になっていきたいですか。

20代は大きなステージで自分だけのコンサートを開けるようにステップアップしていきたいです。

――ファンへのメッセージを。

これからもみなさんに少しでも笑顔と元気をお届けできるような三刀流歌手・彩青として、また細川流一門の彩青として、演歌第七世代の彩青として全国津々浦々のみなさんにお会いできるようにがんばっていきますので、応援のほど、よろしくお願いいたします。

彩青『望郷竜飛﨑』

COCA-18106 彩青『望郷竜飛﨑』

2023年4月19日発売

品番:COCA-18106
価格:¥1,500 (税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】

1.望郷竜飛崎
2.津軽じょんがら節
3.津軽三味線ひとり旅 (ロングヴァージョン)
4.望郷竜飛崎(オリジナル・カラオケ)
5.津軽じょんがら節(オリジナル・カラオケ)
6.津軽三味線ひとり旅 (ロングヴァージョン/オリジナル・カラオケ)
7.望郷竜飛崎 (半音下げオリジナル・カラオケ)
8.望郷竜飛崎 (2コーラスカラオケ)

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