神野美伽が新曲『夜が泣いてる』をリリース 「私と荒木とよひさ先生だからこそできた“わかりあえる幸せ”を歌から感じてほしい」

神野美伽
2023.6.7

1984年のデビュー以来、多彩な活躍を続ける神野美伽。1999年には日本人初の韓国デビューを飾り、ニューヨークでも継続的にライブを行うなど、演歌を中心にしつつも枠にとらわれない幅広い活動を続ける神野に、デビュー40周年を満を持して発売する新曲への想いと秘められた「絆」について聞いた。


神野美伽

――まずは新曲『夜が泣いてる』に対する意気込みを聞かせてください。

今回の新曲を作るにあたって、最初にディレクターが要望を聞いてくれたんです。その時に私が言ったのは、「演歌を歌っておきたい」ということでした。
ここ何年かは韓国のヒット曲や江利チエミさんの曲をカバーさせていただいたりしていますし、これからももっといろんな世界の歌を歌わせていただきたいと思っています。でも、やっぱり私のベースは“演歌”だと思うんです。“演歌”というもの自体はどんどん変わっていくものだと思うので、あえて「“今のスタイルの演歌”を歌っておきたい」ということをお願いしたんです。
それともうひとつお願いしたのが、「荒木とよひさ先生の作品を歌いたい」ということでした。ご存知のように私ととよひさ先生は長い間夫婦という間柄でいて、夫婦でなくなってからもう8年近く経つのですが、デビュー40周年という記念の年に、自分へのけじめという意味でも、とよひさ先生と一緒に作品を作りたいと思ったんです。

――そうして出来上がった『夜が泣いてる』はいかがですか?

できあがった歌詞の内容は男が一人でお酒を飲んでいるという、多分今まで何十、何百とあったシチュエーションの歌だと思うのですが、少ない言葉で描き出された歌詞の中に、言葉で書かれていない部分をすごく感じました。この世で起こって解決できなかったり、かなわなかったりすることってたくさんあると思うんです。ほとんどがそうじゃないかと思うのですが、そうした中で生きている男と女の切なさが伝わってきたんです。男がしみじみお酒を飲んでいる歌なのですが、「幸せだな」「うれしいな」と思いながら歌えたんですよ。
もしこの歌を10年前にもらっていたら、ただ男がお酒を飲んでいる歌になっていたと思うんです。それが今、またとよひさ先生と向き合って作品を一緒に作ることで、書かれていない部分を感じとって歌えることの喜びを味わえる歌になりました。この曲を聴いてくれた皆さんが、私が表現したいと思っている“気持ち”を感じてもらえたら、歌手としてはとてもうれしいですね。

――仕上がった曲を聴いた時の印象を教えてください。

岡先生のメロディーも、歌詞の魅力を最大限に引き出してくれている、ものすごく良い曲だと思います。私はこれまでも岡先生にいろんなタイプの曲を作っていただいたのですが、そのどれとも違う曲でしたね。初めてデモテープを聴いた時から、サビの「夜が泣いてる 胸ん中」という部分がずっと頭の中で回っていました。歌詞が先だったのですが、岡先生がこのメロディーをつけてくれたことに、本当に感謝しています。

神野美伽

――初めてメロディーに乗せて歌った時の印象はいかがでしたか?

これまでは新しい曲をいただくと、「どのトーンで歌うのがいいでしょうか?」といったことをよく先生方と相談していました。キーが半音変わると歌が変わるので、「どっちのトーンのほうが伝わるか?」といったことをご意見いただいていたんです。でも『夜が泣いてる』では、そうした迷いが一切ありませんでした。自分の中からごく自然に出てきた声やリズムのままなんです。なんの無理もせずに歌っていて、レコーディングにもそれで臨みました。
最近はいろんな番組の収録で『夜が泣いてる』を歌わせていただいているのですが、歌うたびに歌が変わってきているのを感じています。歌うたびに歌詞に書かれていない部分の発見があって、それが自然な形で歌になっていく中で、歌に表情が出てきているのがわかるんです。

――ご自身ではその変化をどう感じておられますか?

楽しいですね。テレビの収録で歌うことって、私にはかなりストレスなんですよ。「はい10秒前! 5、4、3……」と言われて歌うのって、何十年やっていても緊張するんです。でも『夜が泣いてる』では、あまりそうしたストレスがないんです。
すごくやわらかい気持ちでカメラの前に立てているのは、やっぱり私自身の「とよひさ先生の詞で、今の演歌を歌いたい」という気持ちからできた歌だからじゃないかと思っています。この歌を歌うたびに、とよひさ先生が何を伝えたいのかがわかって「うれしいな」と思ったり、「またいろいろ話す時間がほしいな」と考えたりしながら歌っています。
とよひさ先生が私に言いたいことがわかるから、私は歌で返している。そんな個人的な歌にしてしまって申し訳ないのですが、それを含めて聴いてくれる人が心地よく思ってくれたらいいなと思っています。
私ととよひさ先生は離婚してしばらく経ちますが、『夜が泣いてる』はおたがいに意固地な負けん気が出た歌ではありません。おたがいに認め合って、感謝している同士が作った歌なので、それが伝わったら聴いてくれる人も悪い気はしないかなと思っています。

――そこがこの歌の聴きどころでもあるんですね。

私ととよひさ先生だからこそできた曲だと思います。歌詞ができ上がる前も、「ワンコーラス書いてみたんだけど、このタッチでいいかな?」なんていう電話がかかってきたりしました。実は今までも、ずっとそういう風に作ってきているんですよ。
この歌のタイトルは、最初は『夜が泣いている』だったんです。でも私は、『夜が泣いてる』の方がいいと思ったので、とよひさ先生に相談して今のタイトルにしてもらいました。
岡先生の曲ができた直後も、私が歌ったものをすぐにとよひさ先生に送りました。「こんな感じで歌ってみたんだけど」「いいと思うよ」といったやりとりをしたのを覚えています。歌を介して、いろんな話を最近は特にしていますね。
とよひさ先生はイメージ的にはずっと若いのですが、実は今年80歳になるんです。もう立派な後期高齢者なのですが、それでもまだ一緒に仕事ができることに幸せを感じています。

神野美伽

―――今年40周年を迎えるにあたっての目標は?

私自身が一番やりたいことは、やっぱりお客様の前で歌うこと。40周年記念リサイタルを3月に大阪で2日間行ったのですが、舞台の緞帳が上がった瞬間に、客席から喜びが伝わってきたんです。同じ時間をみんなで共有できる喜びですよね。本当は当たり前のことなのに、コロナでストップしてしまった時間を経験したからこそ、味わうことができた新鮮さでした。
私はコロナ禍で演歌界がストップしてしまった頃、ジャズやラテンのステージに飛び込みました。ゲストボーカルとして参加させてもらって、知らない世界だから覚えることも多くて大変だったのですが、ものすごくエネルギーをチャージすることができました。だから40周年イベントでは、ここ数年で得てきたものを全部ミックスして楽しんでいただこうと思ったんです。生のビッグバンドをバックに演歌やジャズ、ラテンを歌うなんて、3年前の私には想像もできないことだったでしょうね。たかだか3年でこんなに変わるのかと思うほどですが、コロナ禍でも止まらずに動いたことが、今こんなに返ってきているのを感じています。巡りあわせって、不思議なものですよね。

――『夜が泣いてる』の歌詞にも出てくる「縁(えにし)」ですね。

歌とも人とも「出会い」ですね。自分で作れるものなんて、本当に限られている。自分が発想できるものって、本当に微々たるものでしかない。ほとんどは、人からもらっているものなんです。それをすごく単純に喜んだりしているから、どんどん縁が広がっていくのだと思います。

神野美伽

――去年の3月に椎間板ヘルニアの手術をされていますが、最近体調はいかがですか?

手術の前は、私自身「もう無理だな」と思っていました。あの頃はただただ痛くて、「勘弁して!」と言いたいほど辛かった。「もう立つのはムリだ」と思うほど痛かったのですが、6月に東京でコンサートが入っていたんです。春のコンサートは払い戻しをさせていただいて、ファンにも関係者の皆さんにもたくさん迷惑をかけてしまったので、6月のコンサートだけは何としてもやりたかったんです。「東京公演をやり終えたら、自分を許してやろう」と思っていました。それがステージをやり終えたら、何だか自信がついちゃったんです(笑)。
それまでは「辛い! 苦しい! もう立つのは嫌だ!!」と思っていたのに、今は新曲を出せて、コンサートができて、歌う時間をもらえることに、毎日感謝しかないですね。

――そんな痛くて苦しい時期を支えてくれたものは、何だったのでしょうか?

結局は、プロとしての仕事への「責任」なんですよ。家族の思いやりとか歌手の先輩や仲間の励ましとかは本当にありがたい。でも私にとって一番の大きかったのは、「仕事への責任感」だったんじゃないかと思います。「私にはまだやりたいことも、やらなければならないこともある」というのが、最後の砦だったような気がします。お客様に対するプロとしての「責任」があったからこそ、去年6月のコンサートをやり終えることができたし、今40周年を迎えられることができたのだと思います。
コロナが収まりつつあるタイミングで新曲が出せて、いろんな面白いお仕事がいただけるということは、神様が「まだ歌いなさい」と言ってくれているってことかなと思っています。どこまで行けるかはわかりませんが、みんなに迷惑をかけないようにしながら、やりたいことはやっていきたい。こんなに与えてもらっているから、もうちょっと頑張らないとなって思っています。

神野美伽

神野美伽『夜が泣いてる』

神野美伽『夜が泣いてる』KICM31100

2023年6月7日発売

品番:KICM-31100
価格:¥1400(税込)

【収録曲】

1. 夜が泣いてる
(作詩:荒木とよひさ、作曲:岡千秋、編曲:猪股義周)
2. 男船(新録)
(作詩:やしろよう、作曲:市川昭介、編曲:猪股義周)
3. 夜が泣いてる(オリジナルカラオケ)
4. 夜が泣いてる(一般用カラオケ半音下げ)
5. 男船(オリジナルカラオケ)
6. 男船(一般用カラオケ半音下げ)

神野美伽40周年リサイタル

2023年8月8日(火)
日本特殊陶業市民会館フォレストホール

14時30分開場 15時開演
お問い合わせ:MIN-ON中部センター
TEL:052-951-5391

神野美伽デビュー40周年コンサート

2023年9月13日(水)
新宿文化センター

15時30分開場 16時開演
お問い合わせ:ベルワールドミュージック
TEL:03-3222-7982(平日12~17時)

神野美伽 カバーアルバム『遥歌』 2023年6月21日(水)発売

品番:KICX-1169~70
価格:¥4100(税込)

【収録曲】

【DISC1 CDアルバム】
1.無法松の一生(度胸千両入り)
2.酔歌(ソーラン節入り)~シングルバージョン~
3.北斗
4.座頭市子守唄
5.帰れないんだよ
6.Come on-a my house(家へおいでよ)
7.迷惑でしょうが…
8.黒田ブギー
9.弟よ
10.アカシアの雨がやむとき
11.昭和最後の秋のこと
12.勝手にしやがれ
13.朝日楼
14.舟唄~ダンチョネ節入り~
15.心の瞳
【DISC2 CDアルバム】
1.王将一代・小春しぐれ(浪曲歌謡編)
2.浪花しぐれ「桂 春団治」
3.オホーツクの舟唄
4.十九の春
5.ひばりの佐渡情話
6.奴さん
7.君恋し
8.あなたのブルース
9.やつらの足音のバラード
10.旅立つ朝
11.明日に生きる女
12.テネシー・ワルツ
13.旅の宿
14.真赤な太陽
15.歌は我が命

 

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