演歌・歌謡曲にはなぜ冬の歌が多いのか? 冬を題材にした名曲10選

2022.2.10

演歌や歌謡曲の名曲は数えきれないほど存在していますが、その中でも「冬」をテーマにした楽曲をテレビで聴いたり、カラオケで歌ったりした方も多いのではないでしょうか。今回は、演歌・歌謡曲にはなぜ冬を題材にした曲が多いのか考察しつつ、冬の季節にピッタリな名曲をご紹介します。

冬を題材にした演歌・歌謡曲が多い理由

演歌や歌謡曲に冬を題材にした曲が多い理由は、使用されている音階に関係しているようです。

演歌・歌謡曲では、日本古来の民謡等で歌われてきた音階である「ヨナ抜き音階」を用いることが多い傾向にあります。ヨナ抜き音階とは、第4音(ファ)と第7音(シ)を抜いたド・レ・ミ・ソ・ラの音階のことで、ヨナ抜き音階を聴いたときに感じる哀愁や寂しさを冬や北国といった世界観で表現することが多かったことから、冬や北国を題材にした楽曲が多い、という見方があります。

また、演歌は男女の出会いと別れといった切ない恋愛模様をテーマとして扱っている楽曲が多く、それを表現するうえで冬が舞台になりやすい、ともいえるかもしれません。

冬の演歌・歌謡曲を10曲紹介

数多くつくられている冬の演歌・歌謡曲の中から、名曲を10曲ご紹介します。

津軽海峡・冬景色(石川さゆり)

石川さゆり15枚目のシングル。作詞家界の巨匠である阿久悠が作詞を手掛けています。もともとは石川のコンセプトアルバム『365日恋もよう』のラストを飾る1曲として制作された楽曲で、別れを経た女性が上野駅から夜行列車に乗り、北海道へ帰っていく様子を表現しています。石川は2007年の「第58回紅白歌合戦」以降、『津軽海峡・冬景色』と『天城越え』を交互に歌唱するようになっており、代表曲として幅広い層に認知されています。

この曲はミリオンヒットを記録し、1995年7月には青森市の青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸横、1996年7月には外ヶ浜町の竜飛岬と、歌詞に登場するゆかりの地にそれぞれ歌碑が建てられています。

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北の宿から(都はるみ)

1975年12月に発売された、都はるみの楽曲。140万枚を超えるミリオンセラーとなった代表曲です。
歌詞を見ると、未練が残っている女性を歌っているように感じますが、作詞を担当した阿久の著書『愛すべき名歌たち—私的歌謡曲史—』によると、”「別れた男性のセーターを編む」というのは別れにケリをつける若い女性の儀式であり、「死んでもいいですか」は自嘲気味のひとり芝居というようなイメージで作詞しており、強い女性を表現したかった”と語っています。

この曲は日本レコード大賞と日本有線大賞をダブル受賞したり、桑田佳祐や岩佐美咲をはじめとした多くのミュージシャンがカバーしているなど、演歌・歌謡曲を代表する名曲として知られています。

望郷じょんがら(細川たかし)

1985年8月に発売された細川たかし27枚目のシングル。細川が得意とする伸びのあるハイトーンが印象的な楽曲で、故郷を離れ上京した主人公が故郷の津軽地方(青森県)に思いをはせる様子を歌っています。

NHK紅白歌合戦では第36回、第46回、第51回、第60回、第72回と、5回歌唱されており、第46回では大トリを務めました。

越冬つばめ(森昌子)

1972年に歌手デビューした、森昌子の楽曲。シンガーソングライターである円広志が本名の篠原義彦名義で作曲を手掛けました。「ヒュルリ ヒュルリララ」という歌詞が印象的な楽曲で、とある男性を心底好きになってしまった女性の感情を表現しています。森はこの曲で1983年の「第34回NHK紅白歌合戦」に出場し、歌唱途中に涙を流しながらも歌いきって感動を与えました。

雪國(吉幾三)

吉幾三が作詞・作曲を自身で行い、1986年に発表した楽曲。
もともとは宴会の場で即興で作ったもので歌詞も適当でしたが、レコード会社からメロディの良さを見出され、歌詞を作り直すことを提案されました。この楽曲は1986年に吉が初出場した「第37回NHK紅白歌合戦」で認知度を増し、『俺ら東京さ行ぐだ』などのコミックソングをヒットさせた吉が、本格的な演歌歌手路線に方向転換するきっかけとなりました。

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冬のリヴィエラ(森進一)

1966年にデビューした、森進一の楽曲。作詞は松本隆、作曲は大瀧詠一という日本音楽界を代表するふたりが制作した楽曲です。「リヴィエラ」とはイタリア語で「海岸」を意味しており、男の悲哀を港を出ていく船に例えて表現しています。

森はこの楽曲で1974年に発表した『北航路』以来9年ぶりのオリコントップ10入りを果たし、「NHK紅白歌合戦」では第34回(1983年)、第63回(2012年)で歌唱しました。

なごり雪(かぐや姫)

『なごり雪』はフォークシンガーのイルカの楽曲というイメージがあるかもしれませんが、実は彼女が歌っているのはカバーバージョン。原曲は1974年3月12日に発表されたかぐや姫のアルバム『三階建の詩』に収録されています。

冬~早春を代表する楽曲としてさまざまなアーティストにカバーされているだけでなく、2002年には楽曲の世界観をもとに大林宣彦監督が『なごり雪』として映画化しました。

雪恋華(市川由紀乃)

2019年にリリースされた市川由紀乃のシングル。作詞を石原信一が、作曲を幸耕平が手掛けた楽曲です。ドラマティックな展開が特徴で、恋に生きた情熱的な女性を市川の力強い歌声で表現しています。

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海雪(ジェロ)

「初の黒人演歌歌手」として大きな話題となったジェロのデビューシングル。作詞は秋元康、作曲は宇崎竜童という、音楽界を支えるふたりが制作に携わり話題になりました。2008年に放送された「第59回NHK紅白歌合戦」に出場した際はこの楽曲を披露し、客席にいたジェロの母親が涙を流しながら見守っていたシーンが印象的だった方もいるのではないでしょうか。

ちなみに、歌詞に出てくる「出雲崎」は新潟県三島郡にある出雲崎町のこと。曲の公開当時に冬の日本海を見たことが無かったジェロは、カリフォルニア州の海をイメージして歌ったといわれています。

雪陽炎(丘みどり)

2022年1月にリリースされた丘みどりの楽曲。母親となり復帰した丘みどりの第2章を飾る渾身の楽曲で、曲は中尾唱・詞は森坂ともが手掛けました。楽曲は雪女をモチーフにしており、業を背負った女性のはかなさを、のびやかで憂いのある丘の歌声で表現しています。

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心を惹きつける冬の演歌・歌謡曲

冬をテーマにした演歌・歌謡曲のなかには、世代を超えて歌い継がれている名曲が数多くあります。雪がちらつく寒さや悲しい別れを表現した楽曲もあり、人々の心を惹きつける魅力が名曲のなかに隠されているのかもしれません。

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